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【300字SS】鏡写しの

 きゅ、と慣れないネクタイを締めて鏡を見る。
「……なあ、やっぱ似合わねえよなあ」
 ぼやくように呟けば、背後から「大丈夫だぜ」と返ってくる。
「正義のヒーローを目指しているとはいえ、基本はアイドルだからな。着飾ってこそ、って番長さんも言ってたろ」
「でもよお」
 振り向いた、そのブルーストライプのジャケット姿を上から下まで見た後で。
「ま、馬子にも衣装って言うしな」
「ちょ! それはオレにも分かるぞ! バカにしてんな!?」
「はは、冗談だ。よく似合ってるぜ、相棒」
 どこか腑に落ちない。それは同じ衣装を着ているはずの相棒が格好良く着こなしているから、かもしれない。小さな溜息に、にゃー、と慰めの声がかけられる。

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