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【300字SS】絵心

 すい、と滑った筆先がパピルスにぐるりと円を描く。
「下手くそ」
 その声は背後から。
「何がですか」
 振り向きもせず答えると、ふん、と鼻で笑われた。
「円が曲がっている。“希望の星”は絵心もないのだな」
 言われ、どこが曲がっているものかと眉をひそめて見返していると書き始めから数センチの線を指す華奢な人差し指が視界に入り込んできた。
「絵心なんて魔術の徒には必要ですかね」
「当たり前だ、馬鹿者。線の些細なぶれひとつで現れる効力の替わる繊細な術もある。お前さんには向いていないよ」
 ようやく顔を上げた先には嫌味な笑みを浮かべた魔術の祖たる少年の姿。
「堅実に鍛冶屋として嫁を養う方が向いている」
 大きなお世話にも程があった。

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